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【オリジ】“あなた”という名の神
本家サイトの日記に投下したことのあるキャラのお話。
クロガミ、混沌の人。一応、多分、神様。
混沌の神様が、人間にとって悪い神様であるだけではないと思うのだけれども。
神様の定義なんて、沢山あるからいいんだよ。その人が神様だと信じた人にとっては、その人は神様なんだよ。
全ての原初なる混沌は、一つの何かによってその形を得る。
我等――俺がそいつと出会ったのは、あの世界に閉じ込められるより前。多分、そいつがそうなる五つ、六つほど世界の流れをさかのぼる。
己の世界を持ち、名や形を持ったことによって高次元体となった奴らが噂していた。とても厄介な奴がいて、そいつが自分の世界に流れついたら困ると。
特に見つける気はなかったが、見つけてしまった。
――確かに厄介だ
俺自身、まだその時“俺として確立する前”ではあったが、そいつがいかに『異端』であるか分かった。
混沌でも、高次元体でもないのに、この魂はなんなのか。一つの魂を核として尋常ではない数の魂が鎖によって連結されているとでも言おうか。
しかし連結されているどの魂も核の魂と同じもの。つまり、複数の魂が連結されているように見えるが、これら全て一つの魂なのだ。
普通、魂は一つの生を終えれば“流れ”に還り、新たな形の魂となって次の生を歩む。前世という概念もあるが、その手の魂は他の世界に移ることはなく、一つの世界の“流れ”の中で循環されるからこそ形を保ってられるのだ。
しかしこいつは違う。いくつ世界を流れてきたのだろう。取れるだけでもどこぞの世界の命が溢れる場所を成形した時間分ぐらいは魂の形を崩さず“生きている”。
しばらく俺――我等はそれを観察していた。
我等、混沌は世界の“あいだんとこ”には無数に溢れている。我等もその一部にすぎなかった。だから世界の中を観察するのは容易かった。
観察している間に気付いたのは、そいつは元々『異端』の印を持った魂ではありそうだったということ。そいつが“何か”を保とうとした結果、その“何か”が魂の形を保つために魂を分裂させ、繋ぐ鎖となったのだろう。
ただ、哀れなことにそいつは核がどれなのか、最初の魂がどの魂だったのか思い出せずにいた。
高次元体にもなっていない魂がこれだけのものを抱えておいてそれを覚えてられたら、まさしくとんでもない。しかしそれ故に厄介なものなのだろう。
何を思ったのか、我等はそいつに話しかけた。
「それだけの魂だ。なんなら高次元体にでもなり、己が望むものを作ればいいではないか。
そうすれば、お前が彷徨う理由はなくなる。他の奴等も世界もお前を厄介扱いせずに済む」
あまりにも“哀れ”だったから。哀れみ給えと周りに何度言っても足りないぐらいだ。
しかしそいつはこう言った。
「ただ、帰りたいだけなんだ」
「何処へ?」
「……分からなくなってしまった」
ああ、なんとも哀れで、愛おしいんだろう。
そう、我等はそれを愛おしいと感じてしまった。もうその時から我等は我等でなく、俺だった。
それから俺はそいつのために“あいだんとこ”からそいつの帰りたい世界を見つけるべく、様々な世界を見た。そいつの初めの魂も探した。
しかし、探している間にもそいつの魂の容量は増えるし、最初の魂の手がかりもないので、一向に進展を見せなかった。
そのうち俺はそいつが俺に話しやすいよう、そいつの記憶の中の、特に欠損が酷い部分――欠損が酷いということはそれだけ古く、最初のものに近いと思ったからだ――にあった人物の姿を借りた。
欠損が酷いので勿論完璧にではない。しかし、姿がない分マシだったし、そいつが何か思い出せればいいと思った。
いつしか俺は、そいつのための高次元体――神になりたいとさえ望んだ。
「俺がお前の神になろう。
お前の信じるものを俺が導こう。お前がそう信じてくれるなら。
俺はお前の信じるものを、帰りたいという気持ちを否定しない。お前の神だから。
俺とお前の間に信頼を築いてくれるなら、その証として俺に名前を与えて欲しい」
そいつは俺のことをYouと呼んだ。どこかの言葉で“あなた”という意味の言葉。
「二人いなければ“あなた”なんて言葉は使えない。
あなたが傍にいてくれるなら、あなたの名前は“あなた”だ」
そうして俺は名を得た。
その名は俺に力を与えたし、そいつの支えになった。
同時に、そいつをあの世界に閉じ込める原因にもなった。
クロガミ、混沌の人。一応、多分、神様。
混沌の神様が、人間にとって悪い神様であるだけではないと思うのだけれども。
神様の定義なんて、沢山あるからいいんだよ。その人が神様だと信じた人にとっては、その人は神様なんだよ。
我等――俺がそいつと出会ったのは、あの世界に閉じ込められるより前。多分、そいつがそうなる五つ、六つほど世界の流れをさかのぼる。
己の世界を持ち、名や形を持ったことによって高次元体となった奴らが噂していた。とても厄介な奴がいて、そいつが自分の世界に流れついたら困ると。
特に見つける気はなかったが、見つけてしまった。
――確かに厄介だ
俺自身、まだその時“俺として確立する前”ではあったが、そいつがいかに『異端』であるか分かった。
混沌でも、高次元体でもないのに、この魂はなんなのか。一つの魂を核として尋常ではない数の魂が鎖によって連結されているとでも言おうか。
しかし連結されているどの魂も核の魂と同じもの。つまり、複数の魂が連結されているように見えるが、これら全て一つの魂なのだ。
普通、魂は一つの生を終えれば“流れ”に還り、新たな形の魂となって次の生を歩む。前世という概念もあるが、その手の魂は他の世界に移ることはなく、一つの世界の“流れ”の中で循環されるからこそ形を保ってられるのだ。
しかしこいつは違う。いくつ世界を流れてきたのだろう。取れるだけでもどこぞの世界の命が溢れる場所を成形した時間分ぐらいは魂の形を崩さず“生きている”。
しばらく俺――我等はそれを観察していた。
我等、混沌は世界の“あいだんとこ”には無数に溢れている。我等もその一部にすぎなかった。だから世界の中を観察するのは容易かった。
観察している間に気付いたのは、そいつは元々『異端』の印を持った魂ではありそうだったということ。そいつが“何か”を保とうとした結果、その“何か”が魂の形を保つために魂を分裂させ、繋ぐ鎖となったのだろう。
ただ、哀れなことにそいつは核がどれなのか、最初の魂がどの魂だったのか思い出せずにいた。
高次元体にもなっていない魂がこれだけのものを抱えておいてそれを覚えてられたら、まさしくとんでもない。しかしそれ故に厄介なものなのだろう。
何を思ったのか、我等はそいつに話しかけた。
「それだけの魂だ。なんなら高次元体にでもなり、己が望むものを作ればいいではないか。
そうすれば、お前が彷徨う理由はなくなる。他の奴等も世界もお前を厄介扱いせずに済む」
あまりにも“哀れ”だったから。哀れみ給えと周りに何度言っても足りないぐらいだ。
しかしそいつはこう言った。
「ただ、帰りたいだけなんだ」
「何処へ?」
「……分からなくなってしまった」
ああ、なんとも哀れで、愛おしいんだろう。
そう、我等はそれを愛おしいと感じてしまった。もうその時から我等は我等でなく、俺だった。
それから俺はそいつのために“あいだんとこ”からそいつの帰りたい世界を見つけるべく、様々な世界を見た。そいつの初めの魂も探した。
しかし、探している間にもそいつの魂の容量は増えるし、最初の魂の手がかりもないので、一向に進展を見せなかった。
そのうち俺はそいつが俺に話しやすいよう、そいつの記憶の中の、特に欠損が酷い部分――欠損が酷いということはそれだけ古く、最初のものに近いと思ったからだ――にあった人物の姿を借りた。
欠損が酷いので勿論完璧にではない。しかし、姿がない分マシだったし、そいつが何か思い出せればいいと思った。
いつしか俺は、そいつのための高次元体――神になりたいとさえ望んだ。
「俺がお前の神になろう。
お前の信じるものを俺が導こう。お前がそう信じてくれるなら。
俺はお前の信じるものを、帰りたいという気持ちを否定しない。お前の神だから。
俺とお前の間に信頼を築いてくれるなら、その証として俺に名前を与えて欲しい」
そいつは俺のことをYouと呼んだ。どこかの言葉で“あなた”という意味の言葉。
「二人いなければ“あなた”なんて言葉は使えない。
あなたが傍にいてくれるなら、あなたの名前は“あなた”だ」
そうして俺は名を得た。
その名は俺に力を与えたし、そいつの支えになった。
同時に、そいつをあの世界に閉じ込める原因にもなった。
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